実話怪談 1
手。
小学校高学年の時の話。
家族旅行で和歌山県串本の大島に旅行に行った。
旅行の事はあまり覚えていないが、その体験の出来事は覚えている。
串本から船に乗って大島へ向かう途中の事だった。
船に乗り込み、串本の港が段々と遠くなっていった。
私は家族で船室にいたのだが、何気なく海が見たくなり、船の左の甲板に行って水面をボーっと眺めていた。
すると、海面のすぐ下に何か巨大な物が浮いていた。
気になってよく目を凝らしてみると、ドラム缶ぐらいの太さの排気ダクトのようなものが船と平行に動いていた。
船に乗ったことが無かったので、その時は「船が進むとこんなものが見えるんだ」ぐらいにしか思っていなかったのだが、すぐに違和感を覚えた。
その見えるものを近くで見ていたので、排気ダクトのように見えていただけだった。
全体を把握しようと見てみると、(当時全体を把握しなければと思ってはいなかったと思う。)巨大な手のひらだった。
排気ダクトの蛇腹に見えていたのは、指の関節の部分で、水面には出ずに船と平行に同じ速度でついてきていた。
当時の私はそんなに怖いとは思わず、「手のひらか」程度で済ませ、迎えにきた母と再び船室に戻った。
怖いとも解明してやろうとも思わなかったので、その手がどこから来ているものか等は考えもしなかった。
目に見えぬ何か大きな存在があったのかと最近気になって、串本の神社を調べてみたら、スサノオノミコトをお祀りした場所が点在したが、因果関係は全く分からなかった。