実話怪談 2
顔。
中学生の頃だった。
私は当時仲の良かった陽介の家に遊びに行った。
気候が良かったのを覚えている。
彼の家は、二階建ての一軒家で、玄関に入ると右側にリビングに入れるドア、正面に階段があり、二階へと続いていた。
私が彼の家に着き、玄関の扉をカラカラと開けて、リビングのドアに向かって
「陽介君、あそぼ」
と彼を呼んだ。
中から
「ちょっと待って」
と聞こえてきたので、彼の家の犬、ハスキー(雑種)と遊んでいた。
結構時間が経ったので、玄関に入り
「まだか?」
と聞いたら
「ごめん、あがってきて」
と言われたので
「お邪魔します」
とリビングの扉を開けた。
扉を開けると、トイレに続くドア、お酒が並んでいるガラス扉のローボード、テレビの順に目に入ってきた。
彼は私に飲み物を渡し、遅くなってごめんと言った。
家に人はと聞くと、両親は自営業で二人で働いているらしかった。
「ほな、行こうか」
と彼に言われ、リビングから出るときだった。
ノブをひねり、扉を開け、体はリビングから出た。後ろを振り返り、ノブをつかみ、こちら側に扉を引っ張ったその時、お酒が並んでたはずのガラス扉のローボードの中に、真っ赤な赤鬼のような顔がこちらを向いてあった。
私は驚いて体が少し跳ねたのを覚えている。
記憶にあるのはここまでなのだが、今必死にどんな顔だったか思い出そうとしても、ぼんやりと顔のパーツがあったなと思うぐらいで、はっきりとは分からないでいる。
実話怪談 1
手。
小学校高学年の時の話。
家族旅行で和歌山県串本の大島に旅行に行った。
旅行の事はあまり覚えていないが、その体験の出来事は覚えている。
串本から船に乗って大島へ向かう途中の事だった。
船に乗り込み、串本の港が段々と遠くなっていった。
私は家族で船室にいたのだが、何気なく海が見たくなり、船の左の甲板に行って水面をボーっと眺めていた。
すると、海面のすぐ下に何か巨大な物が浮いていた。
気になってよく目を凝らしてみると、ドラム缶ぐらいの太さの排気ダクトのようなものが船と平行に動いていた。
船に乗ったことが無かったので、その時は「船が進むとこんなものが見えるんだ」ぐらいにしか思っていなかったのだが、すぐに違和感を覚えた。
その見えるものを近くで見ていたので、排気ダクトのように見えていただけだった。
全体を把握しようと見てみると、(当時全体を把握しなければと思ってはいなかったと思う。)巨大な手のひらだった。
排気ダクトの蛇腹に見えていたのは、指の関節の部分で、水面には出ずに船と平行に同じ速度でついてきていた。
当時の私はそんなに怖いとは思わず、「手のひらか」程度で済ませ、迎えにきた母と再び船室に戻った。
怖いとも解明してやろうとも思わなかったので、その手がどこから来ているものか等は考えもしなかった。
目に見えぬ何か大きな存在があったのかと最近気になって、串本の神社を調べてみたら、スサノオノミコトをお祀りした場所が点在したが、因果関係は全く分からなかった。